和紅茶の取り扱いのお知らせ

和紅茶の取り扱いのお知らせ

和紅茶の取り扱いを始めました。

売茶中村では煎茶をメインとして製茶を行なっていますが、ここ最近はその他のお茶も製茶しています。

試験的に製茶していた和紅茶ですが、この度レギュラーメニューとして追加することとなりました。

今回取り扱いを始める和紅茶は京都童仙房の在来種。
透き通った赤い水色、ほんのりと感じられるマスカテルな香り。
冷めてくるとフルーティーなテイストを感じることができます。

 

童仙房は日本茶マニアから絶大な人気を誇る産地で、宇治茶の栽培地域の中では非常に標高が高く500mほど。花崗岩が風化してできた赤みを帯びた土壌はミネラルが豊富で、類まれな香りのお茶を生み出します。

和紅茶のために特別に用意した冷凍茶葉は、いつも「揉み立て煎茶 我逢 童仙房やぶきた」の原料でお世話になっている、石川信一さんにご協力いただきました。

この在来種の茶園は石川さんのご自宅の裏にあります。


石川さんの在来茶園
葉層をよく見ると不揃いでボコボコとしているのがわかります

お茶には品種のお茶と在来種のお茶があり、現在日本で栽培されているお茶はそのほとんどが品種茶です。

在来茶は、種から育てたお茶。
1種1種、DNAが違うため個性がバラバラで不揃いな茶園になります。したがって茶園の管理も難しくなり、また機械での収穫も難しくなるため、収量も安定しません。

一方、品種茶は苗から育てるお茶。
挿し木で増やした、いわばクローンのお茶で「やぶきた」や「あさつゆ」など、特定の個性を持ったお茶だけで茶園を作ることができます。そのため、品質や収量が安定し、管理し易い茶園になります。

明治41年に誕生した「やぶきた」の品質の高さから、戦後急速に品種茶が広がり、現在では在来茶園は残すところ全体の3%以下となってしまいました。

そんな数少ない、石川さんの在来茶園と出会ったのは、2023年の5月中旬。
煎茶用の冷凍茶葉の仕入れで石川さんの茶工場にお邪魔した際、 紅茶用の生葉を探していることを相談したのがキッカケでした。

「ほな、うちの裏にある、もう摘んでへん刈り捨ててる在来茶園の生葉、それで作ってみるか?」

「うちの在来は、樹齢は100年ほどになるんとちゃうかな?自分のじぃさんが若い頃、母屋の裏に植えたらしいんやけど、、、この頃、在来の煎茶なんて市場に出しても値も付かへんし、燃料代やら肥料代やら、色々上がった今では、、、作っても手間とお金ばっかりかかってしまうんで、今はもう作るのやめたんですわ。

石川さんの在来茶園は、茶園としての役割を終えようとしていました。

消費の減少、茶の価格の下落、肥料・燃料の高騰、高齢化など、ただでさえ厳しい茶農家の実状。
市場で値が付くお茶を作り続けないといけないため、在来種は真っ先に淘汰されてしまっても、仕方がないことかもしれません。

 

ですが、在来種ならではの特性を活かしたお茶を作ることができれば、わずか残り3%以下となった茶園に、希少性以外の付加価値をつけることができるのではないのかと思い、この茶葉で紅茶を作ることにチャレンジしました。

冷凍茶葉の原料
生葉コンテナで萎凋させた茶葉

 

種から育った在来種の茶樹は、太く大きな長い根を大地にしっかり生やします。
そのため、土地が持つ微量なエネルギーで育つことができ、その地域のテロワールを大いに感じる紅茶を作ることができます。

肥料によるエネルギーの持ち込みが無いため、旨味成分の元となる過剰な窒素分を蓄えていません。それに加え童仙房の標高の高さにミネラル質な土壌は、茶葉の発酵のために必要不可欠なポリフェノールの含有量を多く作ることができる環境と言えます。そのためか、萎凋中、製茶中には蜜のような甘い香りが店内に広がります。

紅茶向きのアッサム種のべにふうきやべにほまれなど、品種によるポテンシャルで作る和紅茶ではなく、日本古来の在来種によって、土壌のポテンシャルを活かして作ったお茶が、今回の童仙房在来和紅茶になります。

 

是非とも、ご賞味くださいませ。

 

今後も、煎茶に限らず、また宇治茶に限らず、あらゆるお茶を試行錯誤して製茶して参ります。

今後とも売茶中村をどうぞよろしくお願いいたします。